テープ起こしと速記の深〜い関係

 文書起こしという仕事は、もともと速記者によって100年も前から行われていた仕事です。もっとも、カセットテープによって録音されたものを反訳するようになったのは、ここ数十年のことですが、さまざまな条件が重なって現在のようなテープ起こしブームを招いているようです。
テープ起こしという通信教育があらわれ、速記者の資格をもたない者でも比較的簡単にテープ起こしに取り組めるようになったのには、次のような背景があると思います。

(1) 速記者の養成機関や希望者が少なくなり、速記者を供給できにくくなったこと
(2) 速記業務に限らず、すべての面で委託化の傾向が強くなったこと
(3) 自治法ができた当時に採用された職員が、一斉に退職時期を迎え、新規採用を見合わせてこの機会に民間委託に踏み切る自治体が増えてきたこと
(4) 民間に大手のテープ起こし専門業者ができて、外注の受け皿ができてきたこと

速記者のテープ反訳

国会の本会議などでは、今も現役の速記者が活躍していますが、地方議会では経費の点から民間への委託化が相当進んでいるようです。速記事務所にはもちろん速記者がおりますが、いつも速記文字を使って仕事をしているわけではなく、現場に行って速記をとることもありますが、その場合もテープに録音して、事務所に帰ってからトランスクライバーでパソコンに向かって反訳をしています。最近は速記録を見ながら起こすのではなく、やはりテープを聞くのだそうです。発言者を特定するときと、テープの録音が不明瞭な箇所などは、速記録がものをいうのです。大きな速記事務所になると、パソコンによる反訳専門の在宅ワーカーを多数かかえて、最終的チェックを速記者が行っているケースが多いようです。
テープ起こしを写真屋にたとえると、速記者はプロの写真館の店主。通信教育出身の在宅ワーカーはDPEだといわれています。民間業者のテープ起こしは、インスタントにオペレーターを速成し、聞こえた音を文字化するという業務の結果部分のみを機械的に実現しているもので、とりあえず起こせればいいというレベルであるという批判もありますが、利用者側(クライアント)にとってみれば、DPEで充分なのだという場合もあり、利用者(クライアント)も目的に応じて速記事務所と民間の在宅ワーカーを使い分ける動きが出てきているようです。
つまり、少しの間違いも許されないような重要な会議、特に高い品質を求められるようなケースなどは速記事務所に発注し、番組製作のためのビデオ起こしや概要がわかればいいもの、社内スタッフが編集する前段階の初期入力としてのテープ起こしなどは、個人の在宅ワーカーに発注するといった具合に、使い分けをする企業も増えてきていますから、個人の在宅ワーカーや小規模事業者でも、このあたりは充分に参入の余地がある分野だといえます。