打ち合わせ
素起こしといっても……
打ち合わせでは、まずクライアントが何を望んでいるのかを探り出さねばなりません。
「こう聞こえた発言は、こうしてください。こういうケースはとばして、拍手も入れてください」という具合に先方から細かい指示がある場合はらくなのです。外にテープ起こしを発注することに慣れているクライアントは、基準がきちんと明文化されていたり、手際のいい指示を下さるのですが、慣れていないクライアントの場合は、こちらから先方の要望を探り出していく必要があります。
「聞こえたとおりでいいから」
「素起こしでいから」
聞こえたとおりといっても、素起こしといっても、先方の求めているものはさまざまです。ろくに打ち合わせもせずに作業を進めてしまうと、結局は納品されたものをみて
「あ〜、こんなはずじゃなかったのに」とクライアントに言わせてしまうような結果になります。
たとえクライアントからの指示になかったことでも、細かい点を詰めていくのは私たち入力者の義務です。クライアントに喜んでいただく、クライアントの望みにこたえていくのが私たちの仕事なのですから、「聞こえたとおりに」という指示の詳細を具体的に細かく詰めて、お客様の要望をしっかりと把握するようにしましょう。それを怠って勝手な判断で仕事を進めてはいけません。
「聞こえたとおりに起こすのですね。はい、承知いたしました。
それでは、拍手などはどういたしましょうか?
あるいは、言い間違いを訂正されているような場合は…」という具合に、具体的に詰めていきましょう。
どの程度の素起こしなのか
最初の打ち合わせでは、文章に起こしたものをどのように活用するのか、どの程度ケバをとり、どの程度文章を整理してもよいのかを、具体的な例を出しながらじっくり確認していきましょう。
裁判所の記録や会議の議事録などでは、速記的なテープ起こし、つまり本当に音声として聞こえたままに文章化することが求められます。こちらが不要と思う言葉でも、勝手に削ってはいけない場合があります。政治家などは、政治的ないろいろなおもわくから、わざとあいまいな漠然とした表現を使ったり、いろいろな意味にもとれる答えをしたりすることがありますが、それを「わかりにくい表現だから」といって勝手に直したり削ったりしては、それこそ政治問題になりかねません。
最終的にはきちんとリライトして、ちゃんとした印刷物にするのだけれど、それは社内の編集者がやるから、とりあえず初期入力として最低限のケバだけとって、あまり削ったりしないでそのまま起こしてほしい、というのが、私が今いちばん多く手掛けている「素起こし」と言われるものです。これは、私が起こしたものを必ず記者の方なり編集者がもう一度聞き直して、私に聞こえなかった言葉は補ってくれるので、とてもありがたいです。文章整理はクライアントで行ないますので、在宅ワーカーには「早さ」が求められます(正確さはもちろんのことです)。60分を1日でという注文もあるのが、マスコミや出版関係のテープ起こしです。
そのまま社内報に載せたいので、文章整理までやってほしい、というのが、「リライト」といわれる仕事です。クライアントが「素起こし」「聞こえたとおりに」という表現を使っていても、事実上のリライトの分野になると判断したら、その場合は、別料金をいただきます。ある程度、長いおつきあいがあって、社内のことがわかっているクライアントからは、このリライトまでまかされています。
打ち合わせシートの作成
打ち合わせでは、納品の方法、聞こえない文字の代入文字、発言者の表記についても確認します。発言者の間を1行あけるか、など、細かいきまりごとも確認します。
詳細を詰める際に、ひとつひとつクライアントと一緒になって一から考えていたのでは、打ち合わせに時間がかかってしまいますし、「おたくはずいぶん面倒くさいんだね。これなら、社内でやった方が簡単だよ」と言われてしまいます。
具体例を紙に印刷しておき、処理の例を幾つかあげて◯×で選択していただく方法が最もわかりやすく、先方にも負担のかからない方法だと思います。
資料をお預かりする
資料は、そのテープの内容に関するものを、できるだけ多くお預かりするようにしています。会議の出席者の名前、役職、テーマになっていることがらの資料や本もお預かりします。その場で配られた資料なども、送っていただくようにしています。(つづく)