テープをダビングする

テープの事故に備える

テープを受領し、資料にざっと目を通したら、万が一の事故に備えてテープをダビングします。私は幸いまだ事故に遭遇した経験はありませんが、テープが再生中にからまったりして破損したり、最悪の場合切れてしまったという話もよく耳にしますので、作業に入る前に必ずダビングしておくようにします。また、誤って録音データを消去してしまうという事故も、こわいものです。

 テープのダビング作業は、実は私がもっとも神経を使う作業なのです。私がダビングに使っているのは、「ダブルカセット」と呼ばれる普通のカセットデッキで、カセットを入れる部分が2箇所あるタイプのものです。これで一気に高速ダビングするのですが、再生用と録音用のカセットの挿入場所を間違えてしまうと、クライアントからお預かりした大切なマスターテープの音声を全部消してしまうことになります。ですから、ダビング作業をするときには、まずざわついた心を静め、「右がサブ、左がお客さんのテープ」と唱えながら慎重にテープを入れます。

まず、クライアントからお預かりしたテープにたしかに音声が録音されていることを確認します。ごくまれに、何も録音されていないテープが届いてしまうこともあり、その場合にこちらが誤って音声を消去してしまったのか、はじめから何も録音されていなかったのかがわからなくなってしまうと、責任の所在という問題に発展してしまうおそれもあります。

テープが最初まで巻き戻っていることを確認し、録音スイッチを入れる前に、慎重派の私はもう一度イジェクトボタンでテープを出し、クライアントのテープと自分のテープを確認し、絶対に間違いないことを確かめてから録音ボタンを押します。少し疲れているかなと思うときは、もう1回確認します。録音ボタンを押すまでに、最低3回は声に出して確認しています。(笑わないでね、真面目なんだから)

何年たっても、そのくらい神経を使う作業です。疲れていたりほかのことを考えていたりして、もしここで録音テープを反対に入れてしまったら、一巻の終わりだからです。


 私が使っているトランスクライバーは、BM−76というSONYの業務用トランスクライバーで、録音機能のないものになっています。それは、家庭用のトランスクライバーには録音ボタンがついているため、入力中に誤ってうっかり録音ボタンを押してしまう事故がこわいからなのです。もちろん、作業の前にテープのダビングをとっていますから、万一録音ボタンを押して音声を消してしまっても、もう1本のテープで作業を続けることはできるわけですが、しかしやはりクライアントにはテープをお預かりした状態のままでお返しするのが原則ですから、録音事故はどうしても避けたいのです。

テープはダビングするとどうしても音質が落ちるため、聞き取りにくいテープや音の小さいテープの場合は、クライアントからお預かりしたテープのほうをトランスクライバーにかけて作業をすることになります。録音ボタンのことを気にかけながら作業をすると、どうしても気になってしまって作業がはかどりませんし、精神的にも疲労してしまうので、トランスクライバーをBM-75に買い換えてしまいました。1本のテープを起こす4時間ないし5時間の間、ずっと録音ボタンのことを気にかけているよりも、最初のダビングのときだけ全神経を集中してしっかりダビングし、あとは入力に専念したほうが懸命です。


カセットテープの管理方法

テープの管理について、説明します。
ダビング用のテープは、高温になる場所に保管しておくとのびてしまいますので、必ず涼しい場所で保管するようにします。テレビの近くなどの磁気を発生する場所に保管するのも避けましょう

1人ではこなせないような大量のテープ起こしの場合は、何人かの在宅ワーカーに仕事を割り振って、分担して作業をすることもあります。そのような場合は、当然テープをダビングしてメンバーに送ることになりますが、その際は、多少音質は落ちますがマスターテープは私の手元におき、ダビングテープをメンバーに送るようにしています。やはり、万が一の事故がこわいためです。仕事が終わるとテープを回収しますが、回収したそのテープは再利用せずに廃棄することにしています。もしもダビング用のテープを上書き録音して再利用してしまうと、録音時間が短かかった場合には、音声が終了したあとに前回のほかのクライアントの録音データが引き続いて聞こえてくることになります。自分1人で仕事をしている場合はまだいいとしても、グループで仕事をするようになると、別の仕事の音声が聞こえるようなテープを送っては守秘義務に違反することになりますので、特にメンバーに送るテープはいつも新品を使うようにしています。もったいないようですが、テープは消耗品と割り切って、そのぶん少しでも高い料金で仕事を獲得できるように努力しています。

テープの廃棄方法ですが、なかなかよい方法が思いつかないので、まず録音データを消去し、テープの中身を引き出してハサミで切り、完全に再生できない状態にしてから廃棄処分しています。テープをそのまま捨てることは、情報漏洩の危険がありますので絶対に避けるようにしましょう。